ふじき矯正歯科治療が大切にしていること、それは、
「口のトレーニング」です。
矯正歯科治療に加えて、口のトレーニングをして、口の動きまできれいにすることを目指しています。

どうして口のトレーニングにここまで一生懸命になるのか、私の過去の研究なども紹介しつつ説明していこうと思います。(難しかったらごめんなさい。)

1960年頃から、開咬という不正咬合と舌の関係について、アメリカ矯正歯科学会誌などでたくさん研究報告されています。

開咬とは、下の写真のように、奥歯がかんでも、前歯は接触しないですき間が出てきしまう状態のことです(厳密には、前歯部開咬と言います。)

開咬だと、上下の歯の間にすき間があるため、ここによく舌が出てきます。

この舌と開咬の関係について、
「上下の歯の間にすき間があるから、舌が出てくる」
「舌が出てくるから、開咬になる」
という二つの意見があり、しばらく論争が起きていました。
この論争についてはたくさんの研究論文がありますが、長くなるのでここでは割愛します。
ただ、開咬と舌が関係しているのは間違いありません。
その一例を示します。
上の写真の開咬の患者さん、タングクリブという、舌を前に出せないようにする矯正装置を装着しました。

そうすると、8か月後には、下の写真のようになりました。

(Angle I級開咬、治療開始年齢:8歳、タングクリブ装着期間:約1年、治療費:約40万円、矯正治療リスクである装置周りのむし歯はできませんでした。矯正治療中、口のトレーニングもしてもらいました。)
使ったのはタングクリブだけです。
舌を、前に出せないようにするだけで、開咬は治るのです。
ただ、開咬が治ったからといってすぐにタングクリブをはずしてしまうと、舌の動きが昔の状態に戻り、開咬が再発することが多いため、開咬が治った後もしばらくタングクリブを入れっぱなしにして、口の練習をしていく必要があります。(このあたりについては、開咬の治療について書くときにでもまた詳しく説明します。)

ここで理解していただきたいのは、
「舌と開咬の間には密接な関係がある」ということです。
ちなみにその後の研究で、開咬だけでなく、出っ歯(上顎前突)や、受け口(下顎前突、反対咬合)にも、舌が関係していることが明らかにされています。
そのため、矯正歯科治療を行う際には、舌の練習、口のトレーニング、MFTなどが必要と言われているのです。
ここまでの話は、いろいろな矯正歯科のサイトに載っていると思います。

ここからが本題です。
矯正歯科医は、形態(歯並び・かみ合わせ)を中心に考えがちです。
よって、上の症例でも、舌を前に出せないようにしたら開咬が治った、よかったよかった、となります。
開咬が治れば、よし、となってしまうのです。

でも、よ〜く考えてみると、舌の方はどうなのでしょう?
舌は、飲み込んだり、話したりするときにとても重要な役割を果たします。
例えば舌癌などで舌を一部切除したりすると、飲み込みくくなったり、話しにくくなったりします。
こんなに重要な舌の動きを、矯正装置で変えようとするのは、本当に良いことなのでしょうか?疑問です。

少し深く考えてみると、歯並び・かみ合わせと、飲み込んだり話したりする機能、どちらが大切でしょうか?
どちらも大切だと思いますが、飲み込めないということは食べられないということなので、命に関わってきます。
そのように考えると、歯並び・かみ合わせよりも、飲み込む機能の方が重要なのではないかと私(院長)は考えます。
歯並び・かみ合わせより、舌の動きの方が重要ということです。

そこで、開咬の人が飲み込む時の舌や軟口蓋の動きを、私(院長)は研究しました。
その結果、開咬の人は、飲み込むときに舌を前に出しているだけでなく、舌背の動きが遅れ、軟口蓋による鼻咽腔閉鎖は早めに起こること、などが明らかになりました。
詳しくは、下記の論文をお読みください。
Fujiki T, Takano-Yamamoto T, Noguchi H, Yamashiro T, Guan G, Tanimoto K. A cineradiographic study of deglutitive tongue movement and nasopharyngeal closure in patients with anterior open bite. Angle Orthod. 2000 Aug;70(4):284-9.
少し難しいことを書きましたが、要は、
「開咬の人は、飲み込む機能に少し問題を抱えている」
ということです。
ちなみにこの論文は、形態(歯並び・かみ合わせ)ではなく、機能(飲み込む動き)を評価した初めての研究論文だったため、アメリカ矯正歯科学会でも高く評価されました。
でも中にはアンチもいるようで、「藤木らの論文は重要ではない」と違う雑誌に投稿したアメリカ矯正歯科学会の中の偉い人もおられました。
でも、それだけ話題になったということです。
その後も、私(院長)は、飲み込むときの舌の動きなどをたくさん勉強・研究し、海外の矯正歯科学会誌などに論文を載せてきました。(詳しくは、「ごあいさつ」のページをご覧ください。
そして、今現在も、がんばって勉強と研究を続けています。

今現在言えることとして、
一般的に言われているように、
「矯正治療後の歯並び・かみ合わせの安定性のために、舌の練習は重要」
この点は間違いありません。
ただ、矯正治療後の歯並び・かみ合わせが安定している、よかったよかったで終わるのはちょっと違うと思っています。

私(院長)の考え方としては、
「きちんと飲み込めるようになるためにも、舌の練習は重要」
ということです。
若いうちは、おかしな飲み込み方をしていても、いろいろな筋力がカバーしてくれて飲み込めますが、歳をとってきたら飲み込みにくくなっていくかもしれません。

また、舌だけではありません。
最近分かってきているのが唇や頬の動きの重要性です。
舌の動きを補うために唇や頬を使っていることがとても多いです。
逆に、唇や頬をうまく使えないために、舌が変な動きをして補っていることも多々あります。

例えば、上の図のように、舌と唇をくっつけて飲み込むのは、ちょっとまずいです。

また、当然ですが、飲み込む動きばかり診ていても仕方がなく、噛む動きも大切です。
さらに言えば、食べ物を口へ入れる時の唇の使い方、舌の動きなども重要です。
食べ物を口へ入れて、噛んで、飲み込む、この一連の動き、すべてが重要になります。
ついでに言えば、コップから飲むときのコップと口の位置関係、ペットボトルからの飲み方、スプーンでの食べ方、など、いろいろあります。
詳しくは「お口のトレーニングについて」や「口の動きもきれいにしたい方」のページをご覧ください。

要するに、ふじき矯正歯科の口のトレーニングは、矯正治療後の歯並び・かみ合わせの安定性、というレベルの話ではなく、人間が健康に生きていくための大切なこと、と考えて行っています。

ついでの話になりますが、人間は生きていく中で、他人と食事をする機会が数多くあると思います。
その時に、相手を不快にしないきれいな食べ方をしていた方が、相手の心証はよいでしょう。
(私の好きな作家の小説で、「俺がパンケーキを吸うように食べているのがいや、という理由で彼女にふられた」というシーンがありました。)
きれいな口の動きというのは、人間が快適に生きていくために大切な要素でもあると私は考えています。

ふじき矯正歯科が、口のトレーニングをとても大切にしている理由、なんとなく理解していただけましたでしょうか?
ふじき矯正歯科では、矯正歯科治療を受けるすべての方に、口のトレーニングを行っています。
きれいな歯並び・かみ合わせに加えて、きれいな口の動きも身につけられるように、一緒に頑張っていきましょうね。

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