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Vol.7 (H18年4月)
春です。公園等でバーベキューをしている姿を見かけるようになってきました。とてもおいしそうです。思い起こせば,私は小さい頃,肉が嫌いでした。それが今ではバーベキューの肉を見るだけで食欲がわいてきて,食べ出したら止まりません。不思議ですね。どうして好き嫌いができたり,嗜好が変化していくのでしょうか?
人の味覚は一生を通じて大きく変化しないが,脳機能の発達と食経験による学習効果によって食べ物の嗜好が変化していくといわれています。たくさんの食べ物を経験することで,脳での識別能力や判断力がよくなっていき,活発に活動する脳細胞が増えていくのです。また,母親が子どもの頃から食べさせてくれたものや誕生パーティーのような楽しい場面で食べたものは好きな食べ物となり,食べたあとで体調が悪くなったり,食べにくいものや食べたくないものを無理矢理食べさせられたりすると嫌いな食べ物になっていくのです。
私がなぜ肉嫌いだったのかは定かではありませんが,食べ方がとても下手だった私にとって,肉は食べにくい食品だったのかもしれません。しかし,気持ちのよい季候の中で,家族や親しい仲間と食べるバーベキューは,どんな高級料理よりもおいしく感じます。野菜嫌いの子どもも,おいしそうにピーマンを食べたりしています。楽しく気持ちよく食事をすれば,好き嫌いなく,何でもおいしく食べられるのかもしれませんね。
最近話題になっている「食品の裏側」(安部司著:東洋経済新報社)を読んだ。コーヒーフレッシュは水と油からできていること,コンビニで売っているサラダの野菜がシャキッとしている理由,しょうゆとは違うしょうゆ風調味料が存在することなど,これまで考えたこともない内容が書かれており,我々は毎日,とても多くの食品添加物を食べているのだと知った。そして,スーパーに行くと,いろいろな商品の原材料名を見るようになった。
ふと,当院に置いているフルーツ味のフッ素ジェルのラベルを見てみた。案の定,「香料」と記載されており,添加物が含まれていた。考えてみれば,当然のことである。しかし,そもそもフッ素自体が化学薬品である。そのためか,フッ素には毒性があると否定的な考え方の人がいるのも事実である。私は,適正な使用(濃度および使用頻度,使用法など)により,むし歯予防に効果的であると考えているが。。
近年の研究で,「フッ素は比較的低濃度で使用しても,歯科治療で使われるチタンを腐食する場合がある」ということがわかってきた。むし歯抑制効果のあるキシリトールも,摂取しすぎると下痢をするらしい。何にでも長所と短所があるのである。毎日食べている食べ物,歯科治療で口の中へ入る材料・薬品,病気の時に飲む薬など,自分の口に入るものについて,できるだけ関心を持ちたいものである。
皆さん,「のどちんこ」って知ってますか?口の奥の方に垂れ下がって見えている部分のことです。医学的には「口蓋垂(こうがいすい)」といいます。では,のどちんこを上下左右に自由に動かせる人っていますか?ぜひ鏡を見ながらやってみてください。自分の意志で動かすのはちょっと難しいでしょう。しかし「カッ」と言ったりすると,のどちんこのあたり全体が動くのがわかると思います。実は,のどちんこ付近の動きは,口の機能(食べることや話すこと)にとってとても重要な役割を果たしているのです。
食べ物を口の中でしっかりかむためには,口の中に食べ物をためられなくてはいけません。口の中へ入れた食べ物が,そのままのどの奥の方へ流れていってしまっては,かむときがなくなってしまいますからね。そこで,のどちんこ付近がのどへの入り口にふたをして,食べ物がのどの方へ流れていかないようにしているのです。また飲み込むときに,飲み込んでいる物が鼻の方へ流れていかないよう,鼻の入り口をふさいだりするのも,のどちんこ付近の動きです。のどちんこ付近は,自分の意志では動かないのに,自分の知らないところで大活躍しているのです。
最近当院では,多くの方々にうがいトレーニングをお願いしています。このトレーニングの目的の一つに,のどちんこ付近をしっかり動かせるようにすることがあります。しっかりかめる口にするために,とても大切なことです。毎日がんばってやるようにしましょう。(うがいトレーニングを指示されていない方で,興味のある方は,御説明しますのでお申し出ください。)
Vol.10 (H18年10月)
当院では,通院されているほとんどの方に,お口のトレーニングを行っています。皆さんも,うがいのトレーニングやアメの練習など,お口のトレーニング,がんばっていますよね。口をしっかり使えるようにして,より健康な口にすることが目的です。
歯の位置は,舌やくちびるとのバランスによって決まっています。舌やくちびるの力関係が変化すると歯の位置が変化したり,歯の位置が変化すると舌やくちびるの位置や動きが変化したりするということです。舌やくちびると歯並び・かみ合わせは調和しているのです。
矯正治療では,装置を使って歯を動かし,機械的にこの調和を崩しています。歯の位置が変化するわけですから,当然,舌やくちびるの位置や動きも変化していきます。この舌やくちびるの位置や動きが,新しい歯並び・かみ合わせにうまく調和するように変化してくれればよいのですが,必ずしもうまく調和するとは限りません。うまく調和しない場合は,矯正治療後の後戻りの原因になったりします。
矯正治療では,理想的な歯並び・かみ合わせにすることを目指していますので,舌やくちびるの位置や動きも理想的になるように,お口のトレーニングをしているのです。歯並び・かみ合わせは,決して歯だけの問題ではありません。きれいな歯並び・かみ合わせにふさわしい舌やくちびるの動きを身につけることも大切なのです。より健康な口を目指して,一緒にがんばっていきましょう。
Vol.11 (H18年12月)
「よく噛んで食べましょう」という言葉をよく耳にする。確かに,噛むことは大切である。しかし,噛むことを意識するだけでよく噛めるようになるのだろうか?。イート通信(Vol.5)でもお話ししたように,しっかり噛むためには,舌が適切に動く必要がある。また,あごも適切に動かなくてはならない。噛む動きは単純ではないのである。
食べ物を噛むときに,あごは円を描くように動く。要は,開くときと閉じるときの経路が異なり,閉じるときにはあごが少しずれた位置から噛み込むのである。石で砕いたりすりつぶしたりする様子をイメージしてほしい。スナック菓子は石でたたけば簡単に砕けるが,野菜や肉は石でたたいてもちぎれない。石ですりつぶすことで,ようやくちぎれる。歯で噛むときも同じである。あごが少しずれた位置から噛み込むことで,上下の歯ですりつぶす動きが生まれ,食べ物が小さくなっていくのである。
もちろん,このような動きは意識的に行われるものではない。脳幹という部位で基本的な動きのパターンが作られ,口の中の感覚などによって,その動きが調節されているのである。しかし,食べ物を噛むという複雑な運動のメカニズムは未だ不明な点が多い。そこで,よく噛むように意識する事も大切かもしれない。奥歯ですりつぶす動きが必要な食べ物を食べることも重要だと思われる。
Vol.12 (H19年2月)
かむ力ってどれくらいか知っていますか?一般的には自分の体重と同じくらいといわれています。しかし実際には奥歯でかんだ場合と前歯でかんだ場合では違いますし,えらの張った短い顔の人と面長の人でも異なります。計測方法による違いや個人差が大きいのです。では,かむ力は強い方がよいのでしょうか?弱い方がよいのでしょうか?答えは,ある程度の強さは必要ですが,単純に強い方がよいわけではありません。
そもそも食事の時には,口に入ってきた食べ物の硬さを瞬時に判断して,かむ力が調節されています。実際の食事の時にやってみるとよくわかりますが,例えば,豆腐を食べるときと肉を食べるときとでは,明らかに違います。いつも同じ力でかんでいるのではないのです。また,予想以上に硬い食べ物が含まれていると,かむのをやめるという反射も人間には備わっています。貝などを食べていて砂が混じっていると,がのをやめる動きがこれにあたります。食事中のかむ力は,無意識のうちに調節されているのです。
そこで,かむ力を強くしようとする必要はありません。その食べ物にふさわしいかむ力を発揮できるよう,いろいろな硬さの食べ物をバランスよく食べて,経験していくことが大切なのです。何でもおいしく食べられるお口にするために,たくさんの種類の食べ物をバランスよく食べるようにしましょう。
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